治療法探る「1リットル」の病

| コメント(3) | トラックバック(0)

このタイトルはmixiで使われていたもの.
いくらなんでも,これじゃ意味が通じないだろ.

ソースはこちら
1リットルの涙」の難病、遺伝子治療で改善…群馬大」(YOMIURI ONLINE

こういうニュース記事は結構簡単に無くなってしまうので全文引用しておく.

 群馬大大学院医学系研究科の平井宏和教授(43)は14日、難病の脊髄(せきずい)小脳変性症を、遺伝子治療で改善するマウス実験に成功したと発表した。


 研究成果は、専門誌「欧州分子生物学機構機関誌」のネット版で公開される。この病気にかかると、脊髄や小脳の神経細胞が徐々に破壊され、歩行などが困難になる。根治療法は見つかっていない。平井教授は今後、サルを使った実験に取り組み、患者への応用を探るという。

 平井教授は3年前に、HIVウイルスから病原性を除去したベクター(遺伝子の運び屋)を作製。昨春、このベクターに「CRAG」と呼ばれる治療用の遺伝子を組み込んで、同変性症を発症させた生後21~25日のマウスの小脳に注入したところ、よろよろしたり転んだりしていたマウスが約2か月後には正常に歩けるほど回復したという。

 同変性症は、遺伝が原因の場合、神経細胞内に毒性のあるたんぱく質の塊が蓄積して発症すると考えられている。「CRAG」には塊を溶かす働きがあることが、培養細胞を使った実験ですでに確認されていた。しかし、生体細胞に注入する方法が確立されておらず、今回の研究で初めて、生体での効果が確認された。

 平井教授の話「サルでの実験は治療用遺伝子の量を増やせばうまくいくと思う。ベクターの安全性が確認されれば、人の臨床試験も行いたい」

 ◆脊髄小脳変性症◆ 患者の4割は遺伝性とされるが、それ以外は原因不明の神経疾患。歩行がふらつく、話すとき舌がもつれるなどの運動失調が主な症状で10、20年という長い期間をかけて進行する。国内の患者は約2万人。実在の女性患者の日記を基にした「1リットルの涙」はテレビドラマや映画にもなった。
(2008年3月14日14時13分 読売新聞)

これだけだと,少し説明が足りないのでもう一つ.
遺伝子治療で歩行障害改善 小脳変性症マウスで群馬大」(カナコロ

 遺伝性の脊髄小脳変性症を再現したマウスの実験で、歩行障害などの症状を遺伝子治療で大幅に改善させることに、群馬大の平井宏和教授(43)らのチームが成功し、欧州科学誌の電子版に14日付で発表した。

 今後、人間に近いサルを使って同様の実験を行い、臨床応用が可能かどうかを検討する。

 脊髄小脳変性症は、小脳や脊髄などの神経細胞が徐々に機能を失い、消失する難病。歩行障害などの運動失調が主症状だが根治療法はなく、国内の患者約2万人のうち約4割が遺伝性とされる。

 平井教授らはまず、遺伝性の中でも患者数が最も多い「マシャド・ジョセフ病」と同じ遺伝子の異常を持つマウスを作製。歩行障害などの症状を示したマウスの小脳に「CRAG」という酵素の遺伝子を、病原性をなくしたエイズウイルス(HIV)に組み込んで注入。すると約2カ月後に症状が大きく改善した。

正確には「1リットルの涙」の木藤亜也さんの病気は「オリーブ橋小脳萎縮症」という病気で,原作が出版された時代には「脊髄小脳変性症」に分類されていましたが,現在では「多系統萎縮症」に分類されています.
脊髄小脳変性症も多系統萎縮症も,小脳,脳幹,脊髄などの神経細胞が破壊され萎縮していく病気です.現在,この2種を分けるのは,この症状が遺伝するかしないかのようです.遺伝しない「孤発性」のものが多系統萎縮症.「遺伝性」のものが脊髄小脳変性症となっています.
遺伝性のものは,そのほとんどが「常染色体優性遺伝」で,片方の親が疾患していた場合,子供に遺伝する確立は50%,もし両親が疾患していた場合は75%の確立で遺伝します.逆に言えば他人に「感染」するという可能性は全くありません.
脊髄小脳変性症で神経細胞が破壊される原因は,上の記事では毒性のあるたんぱく質の塊が蓄積するためとなっているが,実は,この毒性のあるたんぱく質は自分自身が作り出している.通常は遺伝子の塩基配列が写し取られて,たんぱく質が生産されるのだが,遺伝子の一部に異常があり,その部分を写し取って作られるたんぱく質は,その異常のため人体に有効なたんぱく質ではなく,毒性をもったたんぱく質になってしまうのである.つまり,生まれた時から自分の中で毒を生産していることになる.
この遺伝子中の異常な塩基配列の遺伝子中の位置により,脊髄小脳変性症の型が分かれている,現在特定されているものが17種類ある.
治療に使うベクターとなるのはHIVである.下の記事にあるように,これはまさしくエイズウイルスである.病原性を除いたものというのは当たり前だが,なぜエイズウィルスでないと駄目かというと,先に説明したように,毒性をもったたんぱく質は,死ぬまで生産されるからである.これに対抗するには死なないウィルスが必要になるからである.
記事ではさらっと書かれているが,このベクターは「小脳の直接注入する」のである.血管への注射などでは「血液脳関門」のおかげで脳のは到達できないのだ.
あるサイトの記述によると「脳に穴を開けるよりも神経細胞が死んでいく事の方が性質が悪い」のだそうだ.

とにかく同病に苦しめられている方々に朗報となることを願ってやまない.

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://87noki.com/cgi-bin/mt4/mt-tb.cgi/458

コメント(3)

下の件.ハンチントン病ではなくパーキンソン病でした.

まだまだ遺伝子治療の人体への適用は未知なる部分が多いのです.

ベクターウイルスは本人にとっては有効になるかもしれませんが,逆に言えば,そのウイルスのキャリアになってしまい,その子孫において,そのウィルスがどの様に正常な遺伝子に作用するかわからなかったりもするわけで….
ハンチントン病におけるベクターウイルスの治験に関する資料を発見したので自分メモも兼ねてリンク.かなり生生しいです.
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1012-5c06.pdf

ベクターは今後危険性のないものが使われる様になるんじゃないですかね。
何にせよ難病に一筋の光明が見出されたのは喜ばしき事です。

コメントする

2012年5月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

アーカイブ

ウェブページ